『早くも、続編期待!!』
「政府が、任意の18歳から24歳の国民を死に至らしめる」ことが合憲とされている世界。この突飛な設定をリアルにみせる工夫が色々と凝らされており、おバカ映画になっていないのが第1のポイント。たとえば、イキガミをもらった金のなさそうな若者が、レストランに行く場面。どうせ死ぬなら最後に、食べたことのない高級料理をというわけですが、ここで注目すべきは『イキガミ』を見たウェイターの態度の変化。このシーンで、「国家繁栄維持法」をこの作品世界の人々がどう受け取っているかが浮き彫りとなり現実味を持たせている。 こうしたディテールを積み重ねることで、粗悪な実写SF映画にありがちな非現実感、バカらしさのようなものを払拭。観客が人間ドラマに集中できる土台を作り上げている。
第2のポイントは、ダラダラと1人のケースを描くのでなく、3人のドラマをイキガミ配達人を語り部とした構成が良い。コンパクトで無駄のないドラマと、厚生保健省内部のドラマとのスピーディーな展開が気持ちいい。と同時に、小さなアラ(ツッコミどころ)が隠れる効果もあります。
そして、ひそかにはびこるファシズムの脅威と生きる価値を問い直すという意味でも、ただ単にお涙頂戴でも、死を宣告された者の感動ドラマはいくらでも作れそうで、続編もOKというのも大きなポイント。誰もが反発を感じるであろうこのシステム、体制を崩壊させるドラマは、この物語の最終回にとっておけばいいんだから。
事実、松田翔太演じるイキガミ配達員の藤本賢吾の立ち居振る舞いからも、何かありそうだし、そんな雰囲気が伝わってきます。